素人のように考え、玄人として実行する
ちょっと古い本でありますが、ロボット工学の世界的権威、
カーネギーメロン大学の金出武雄先生の著書
「素人のように考え、玄人として実行する」はとても示唆に富んだ本であります。
その中に、貧しかった幼少時代のあるエピソードが書かれています。
長くなりますが、そのまま引用します。
小学校に入る前、近所の川で釣りをしようと思った。
釣り道具を買ってほしいとは言えない。
そこで、自分でつくることにした。
釣りをしている人の様子を観察すると、
J字型をした針金が糸の先についている道具で釣っているのがわかった。
「よし、あれさえあればいいのだ」と、針金をペンチでJ字型に曲げてつくり、
白の木綿糸にくくりつけ、先にミミズをつけて橋の上からたらしてみた。
しかし、何回やっても釣れない。ミミズは取られるばかりである。
白の糸がよくないのかと黒に変えてみてもだめであった。
以来、私は魚釣りが好きになれないでいる。
釣れないのは当然で、釣り針には魚が食いついたら引っかかる
戻りの仕掛けがいることに気づかなかったのである。
私はこの話が好きで、戻りのついた釣り針を見るたびに、
これを考えた人はすごい。きっと魚に逃げられた挙句に
あきらめずにかんがえたのだろうと感心せずにおれない。
・・・「良い結果を得るためには仕掛けがいる」という事を伝えるために、
先生がよく用いるエピソードだそうですが、
釣り人、特にフライフィッシャーの目から見ると、
根本的な間違いに気付きますよね。
釣り針についている「戻り」をバーブと呼びます。
私なんかは普段、戻り=バーブのついていない針、
つまりバーブレスの針で釣っていますが全然支障ないです。
そして、先生のエピソードを読んですぐに気付くのが、
針金を曲げて釣り針をつくっても絶対に魚はかからないということです。
問題は、「戻り」の有る無しではなく、
針金の先が尖っていなかった・・・ただそれだけです。
どんなに立派な戻りがついていても、
先が尖っていなければ魚の口を貫通することはできません。
金出少年がやるべきは、ヤスリで針金の先を削る作業だったのです。
先生はロボット工学は玄人ですが、釣りに関しては私の方が玄人かな(笑)
こんな細かい指摘を受けるために、
このエピソード出したんじゃないんでしょうけれどね。
何事にも専門分野があり、出来の悪い釣りバカが、
ロボット工学の権威に勝る分野もあるという話でした。
余計なこと言ってすいませんね、金出先生。
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